公正取引委員会は3月28日、マイクロソフトのActivision Blizzard買収計画について、排除措置命令を行わないことを発表した。
同委員会は「本件行為が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとはいえない」と判断したとして、審査を終了。同時に審査の詳細を公開している。
マイクロソフトは2022年1月18日、アメリカのゲーム開発大手であるActivision Blizzardを買収すると発表(関連記事)。買収額は687億ドルと、ゲーム市場では世界最大規模のM&Aとなる計画に対して、各国で独占禁止法の規程に基づく審査が行われてきた。
その後、サウジアラビアやブラジルなど、現地の市場に与える影響力が比較的少ない一部地域の規制当局が取引の承認を発表する一方、主要市場ではより慎重に審査を行う状況が続いている。
日本以外の各国での最近の動きとしては、英CMAは3月24日に発表した暫定報告書で、コンソールに関する懸念を緩和(クラウド分野での独占は懸念を緩めていない)。対して、米FTCは昨年12月より差し止めを求める訴訟を提起している。
公正取引委員会は審査にあたって、意見書の内容や資料を精査し、競争事業者及び需要者に対するヒアリングを実施。第三者からの情報・意見の募集も実施した。また、英国競争・市場庁(CMA)、欧州委員会(EC)、韓国公正取引委員会、豪州競争・消費者委員会(ACCC)および米国連邦取引委員会(FTC)との間で情報交換を行いつつ議論を進めたという。
審査結果は情報交換を行った米国とは対照的な結論と言えるが、同委員会は「世界全体で事業を展開している事業者であっても、国・地域によって市場シェアが異なる状況にある」と説明。
報告書によると、同委員会は海外の主要市場でやり玉に挙げられている「Call of Duty」シリーズのコンソール独占が市場に与える影響について、日本ではより人気の高いゲームシリーズが存在する点を指摘。調査データとしても、国内におけるマイクロソフトおよびActivision Blizzardのシェアがコンソール・PC・モバイルいずれにおいても5%以内に収まっていることから、「競争が制限されることにはならない」と結論付けた。
マイクロソフトのActivision Blizzard買収計画は2023年中に完了することを予定している。