セガ、スポーツデータサイエンスを学ぶ大学研究室の分析・発表に協力 「ぷよぷよ」公式大会の試合データを提供

 セガは、2023年1月に日本統計学会スポーツデータサイエンス分科会と情報・システム研究機構統計数理研究所が主催・開催した「2022年度スポーツデータサイエンスコンペティション」について、昨年に引き続き、協賛企業としてesports部門へセガ公式プロ大会「ぷよぷよチャンピオンシップ」及び「ぷよぷよファイナルズ」の試合データを提供し、スポーツデータサイエンスを学ぶ大学研究室の分析・発表に協力したと発表した。

試合データ

 「2022年度スポーツデータサイエンスコンペティション」は、一般社団法人日本統計学会の分科会として2009年に設立された日本統計学会スポーツ統計分科会(2021年より日本統計学会スポーツデータサイエンス分科会)と、情報・システム研究機構統計数理研究所が主催・開催しているコンペティション。実データに基づく応用研究の促進と、研究成果を現場に還元するきっかけを与えること、また研究者の裾野を広げることを目的として実施されている。

 今回より名称を「スポーツデータサイエンスコンペティション」と改め、それまでの「スポーツデータ解析コンペティション」を含め第12回の開催となり、全国から66チームの大学が参加して、野球部門、サッカー部門、柔道部門、そしてesports部門の4つのスポーツデータをそれぞれの視点で分析・発表した。

 セガでは、eスポーツもフィジカルスポーツと同様に、過去の試合データから「客観的な指標」を作っていくことで、プロ選手たち個々の特徴をスタッツ化して評価できる指標を提供している。それにより、選手が効果的な練習方法を組み立てる参考となるほか、応援するファンにとっては対戦カードの結果を予想するなど、大会観戦をさらに楽しむための指標として利用されている。

 esports部門では大学研究室の方々が自由な発想で取り組めるように、「ぷよぷよ」プロ選手による過去24大会の動画とセガの大会実況システム「bi-e-Play」のAI画像解析によるJSON形式の詳細対戦データを提供。

 

「2022年度スポーツデータサイエンスコンペティション」審査結果

【esports部門】〇優秀賞
敵対的生成ネットワークによる「ぷよぷよ」の特定小連鎖盤面の生成大平悠介,伊藤真大,三家礼子(早稲田大学)

敵対的生成ネットワーク

またポスター部門においては、セガ公式プロ大会「ぷよぷよチャンピオンシップ」の対戦データを使用した作品が他のスポーツを押さえ最優秀賞を獲得。

 

【ポスター部門】〇最優秀賞―
ぷよぷよDX―「ぷよぷよ」における土台と連鎖の可視化システム―
藤田海渡,平井一史,一桝喬也,秋葉礁,吉田直樹,西川哲夫(武蔵野大学)

ぷよぷよDX

 

■esports部門優秀賞受賞者コメント
敵対的生成ネットワークによる「ぷよぷよ」の特定小連鎖盤面の生成
大平悠介,伊藤真大,三家礼子(早稲田大学)

 早稲田大学学部4年の大平悠介と申します。eスポーツ部門の優秀賞を受賞できて大変嬉しく思います。昔からゲームは好きで、「ぷよぷよ」に関してはスーパーファミコンの「す~ぱ~ぷよぷよ」をプレイしたことがあります。

 本コンペティションが始まる半年ほど前まで、敵対的生成ネットワークを用いた生理データの拡張に関する取り組みを行っていました。その際、敵対的生成ネットワークを用いて本物そっくりな画像を生成できることを知り、大変興味を持ちました。

 「ぷよぷよの盤面を『ぷよ』を1ドットとした1つの画像として考えれば敵対的生成ネットワークで盤面を生成できるのでは」と考えたことが本研究を発案したきっかけです。しかし、盤面データの作成や、敵対的生成ネットワークのプログラムを構築など、全て完璧に行うには時間がありませんでした。しかしながら、何とかプログラムの実行ができ、ラベルに対応した連鎖の盤面が生成できた時は達成感がありました。

 正直、現状の精度自体は低く、改善点は多々存在しますが、敵対的生成ネットワークを用いてぷよぷよの盤面を生成できる可能性は示せたのではないかと思います。貴重なデータを活用できるコンペティションを開催していただいた関係者の皆様に感謝申し上げます。

■ポスター部門最優秀賞受賞者コメント
ぷよぷよDXー「ぷよぷよ」における土台と連鎖の可視化システムー
藤田海渡,平井一史,一桝喬也,秋葉礁,吉田直樹,西川哲夫(武蔵野大学)

 武蔵野大学4年の藤田海渡と申します。ポスター部門最優秀賞を受賞することができ、大変嬉しく思います。私たちのチームは、メンバーの全員が「ぷよぷよ」を数回のみしかプレイしたことが無い中での参加でしたので、研究テーマや分析内容を決める際に大いに悩みました。「取り敢えず、試合映像を画像処理によってプログラム内で再現してみよう!」というところからのスタートでした。再現さえできれば、その後は何とかなるかもしれないと考えたのです。

 ところが、実際に再現を試みてみると、予想以上に大変でした。ゲームの再現において は、PythonのOpenCVを用いて画像処理を行い、各フレーム画像からぷよの色を同定し、得られた色の配列を基に土台の判定を行いました。ぷよの色の同定では、様々な色の背景やおじゃまぷよから識別し色判定する必要がありました。BGRスペクトルを用いる方法など様々な方法を試しましたが、精度は良くても計算時間がかかりすぎました。最終的に、HSV色スペクトルを用いる方法で、高速にかつ99.95%の精度で判別できるようになりました。実は、昨年我々が特許を取得した「フェンシングの自動有効突き判定装置プログラム」で、同様な色判定問題にチャレンジした経験があり、その経験を生かすことができました。

 取得した再現データから、土台毎の勝率や選手毎の土台使用に関する分析を行ったところ、土台を作る場所によって、また土台を使う選手によって、ゲーム勝率が大きく変化することが分かりました。今回は、最初の分析として、土台の形や場所のみの分析を行ったため、土台周辺についての分析まで至りませんでした。

 今回、ゲーム盤面の再現を実現することで、土台に関する分析が可能になりました。今後は、土台周辺の情報の取得や分析を行い、土台がどのような使われ方をして、勝率の違いが生じているのかを分析したいと考えています。更なる勉強や研究を続けて、戦術の分析を深化させ、また高速化による実時間分析を実現したいと考えています。それによって、eスポーツのデータ分析分野の発展に少しでも貢献できれば幸いです。協力し合ったチームの仲間、ご指導頂いた西川先生をはじめ、コンペティションに関わられた全ての方々に心より感謝申し上げます。

■審査員・ヨダソウマ選手コメント
ヨダソウマ選手(日本eスポーツ連合公認「ぷよぷよ」プロ選手)

 昨年から続いて「ぷよぷよ」がesports部門に選ばれ、選手として大変喜ばしいです。今年はプレイスタイルや戦術の相性などはもちろん、AIによる盤面生成や演出の提案など様々な角度から研究が行われており、とても面白かったです。ぷよぷよのルールはデータサイエンスと相性が良く、これまでの選手たちによる感覚の世界から、データ分析によって解像度が高くなっていく、とても良い機会だと思っています。ご参加いただいた皆様、関係者の皆様、誠にありがとうございました。

■コンペティション事務局コメント
酒折文武(2022年度スポーツデータサイエンスコンペティション)
2022年度スポーツデータサイエンスコンペティション

 昨年度のコンペティションに引き続いて、今年度も「ぷよぷよeスポーツ」のデータや映像から価値ある分析結果等を競うesports部門を開催しました。参加チーム数は多くなかったものの、戦術分析のためのデータ生成手法や、観戦を盛り上げる演出に関するもの、土台に関する分析、プロ選手のタイプ分けと相性などのレベルの高い興味深い発表と、素晴らしいインフォグラフィック作品の提出がありました。

 ぷよぷよは戦略性が高く、さらなる分析可能性、そして分析結果の活用可能性に溢れています。私達の成果が今後のぷよぷよに少しでも貢献できれば嬉しいです。今後もぷよぷよを含むeスポーツに関するコンペティションが開催できればと考えています。

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