ワントゥーテンは、2022年2月1日、オンラインカンファレンス『SUSTAINABLE CONNECT 2022 ~AI × XRによる「現実と仮想の融合」が、アフターコロナを切り拓く~』を開催。XRやAI関連のエンジニア、組織のDX担当者を対象に、XRとAIの新潮流と最新のDXソリューションの説明が行われた。
本稿では、オンラインカンファレンスの後半に行われたXRセッション「現実空間と仮想空間が融合するミラーワールドの現状とこれから」の模様について、レポートをお届けする
【登壇者】
投機、ゲーム、コミュニティ。
運営ごとに特徴が大きく異なるメタバース
新型コロナウィルスの影響により、生活様式がオフラインからオンラインへと大きく変化した現代社会。オンラインプラットフォームを利用した体験や他者とのコミュニケーションが活発化し、暗号通貨技術を用いた新しい経済圏へのリテラシーがボトムアップ。インターネットユーザーの間で、メタバースの共有概念が急拡大していく形となった。
今ではすっかりバズワード化しているメタバースだが、その背景にはMeta(元Facebook)のメタバース構想が注目を集めたことも理由にある。Metaはこれまでに、ソーシャルVRサービス「Horizon Worlds」の配信、クリエイター支援やXRプログラム・研究のためのファンドの成立、App Labによるストア外Oculusアプリケーション配信プラットフォームの開放など様々な施策を行ってきた。
2021年時点で約100億ドル(約1兆1,400億円)をメタバース事業に投資しており、今後も数年間に渡って投資額を増やしていく方針を明らかにしている。
北島氏は、Metaにより公開されたインターフェースを活用して新たなアプリケーションを生むといった、デベロッパーエコシステムが生まれたと説明。誰もがクリエイターになれるクリエイターエコノミーが形成され、メタバース内でコミュニティを統合させることに繋がったと続ける。
メタバースは運営会社ごとに大きく特徴が異なっており、北島氏によると「①投機性」、「②ゲーム性」、「③コミュニティー性」の大きく3つに大別できるという。以下に、その代表例として紹介が行われた内容についてまとめていく。
①投機性の高いメタバース
●Decentraland
イーサリアムのブロックチェーン上で起動できるVRプラットフォーム。購入した土地に様々なカスタマイズが施すことができるほか、NFTの性質を活かしたアートギャラリーを開催することも可能。Webベースで開発されており、スマートフォンブラウザでのプレイはサポートされていない。
●Cryptvoxels
Decentralandと同様に、イーサリアムのブロックチェーン上で起動できるVRプラットフォーム。NFTが話題を集めるきっかけとなったメタバースで、ワールドは全てボクセルベースで構築されている。
●The Sandbox
付属のエディターでゲームを開発したり、アイテムやアバターを作成し、マーケットプレイスで売買することが可能。アディダスが土地を購入したことで話題を集めるなど、近年では取引が活発化している。
●Everdome
高性能な3Dスキャナーを用いて高精度でフォトリアルな3DCGを作成する際に、暗号トークンを必要としていることが特徴。プラットフォームは未定となっている。
●Bloktopia
Everdomeと同様のフォトリアルな世界観が特徴。仮想通貨としてBloktopiaを扱うメタバース。
②ゲーム性の強いメタバース
●Roblox
1日あたり4000万人を超えるアクティブユーザーを誇るエンターテイメントプラットフォーム。クリエイターやプレイヤーのほとんどが18歳未満の若年層中心で構成されていることが特徴。作ったゲームをプレイしてもらうことで収益が得られる。
●Fortnite
Epic Gamesが運営するクロスプラットフォームのバトルロイヤルゲーム。MarshmelloやTravis Scottなど著名アーティストのオンラインイベントも多く開催される。
●あつまれ どうぶつの森
コロナ禍において卒業式や結婚式などのイベントを行うプレイヤーもいれば、公共機関による行政情報の発信の場として活用するコミュニティ運営者が現れたりと、自由度とマルチプレイ要素がマッチし支持を得た。
●Axie Infinity
P2E(Play to Earn)を強く体現しているメタバースで、ゲームをプレイすることで仮想通貨のインセンティブが受け取れる。フィリピンやベネズエラを中心に、ユーザーが収入を得るために本作をプレイしたことで拡大したと言われる
③コミュニティ性の強いメタバース
●Stageverse
Stageverse社が開発・運営するバーチャルライブのプラットフォーム。ファンタジー色の無い、リアルな映像配信をメタバース上で体験できる設計。
●SANSAR
欧米を中心にオンラインバーチャルライブを成功させてきたメタバース。筐体で撮影したリアルアバターを用いてプラットフォームに参加ができる取り組みが行われている。
●VR Chat
Oculus製品やHTC Viveなど、ミドルからハイエンドのVRヘッドセットの利用を想定・サポートしているソーシャルVRプラットフォーム。自由度が非常に高く、アバターやワールドをユーザー自らが作成したり、内部の挙動をプログラミングできる。
●Hubs Cloud by Mozilla
オープンソースのソーシャルVRプラットフォーム。アセットを用いたり別々のサービスを扱うなどして、マルチプラットフォーム化を実現しようとしている主催者も増えている。
世界中から約55万人が参加した
「バーチャル渋谷」のハロウィーンイベント
続いて、中馬氏からは、KDDIと渋谷区観光協会、渋谷未来デザインが発足したプロジェクト「バーチャル渋谷」の説明が行われた。バーチャル渋谷は、デジタル空間上に製作されたもうひとつの渋谷を舞台に、自宅にいながらさまざまなイベントの開催や参加を可能にした、渋谷区公認の配信プラットフォーム。プロジェクトにはフジテレビなど73社が参画しており、渋谷ならではの新たな文化の創出や魅力的な街づくりを推進している。
2021年10月16日〜31日の期間に実施されたハロウィーンイベント「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス 2021」は、世界中から約55万人が参加。現実の渋谷の街の密回避や新型コロナウイルス感染拡大防止に繋がったことはもちろん、渋谷の魅力を世界へと発信することに大きく貢献する結果となった。
【参考動画】バーチャル渋谷 au5G ハロウィーンフェス 2021
渋谷を舞台に選んだ理由について中馬氏は、街が持つユースカルチャーとストリートカルチャーが魅力的だったことを挙げる。カルチャーの発信地として人が人を呼ぶ渋谷の構造が、人が基軸となるメタバースとの親和性が何より高かったと説明を続ける。渋谷をデジタル空間上で再構築することで、世界的なコンテンツに成長できるという期待もあるそうだ。
中馬氏は、2022年春のリリースを予定している進化系サービス「バーチャルシティ構想」についても紹介。バーチャル渋谷でのイベントはパートナー企業を中心に行われてきたが、バーチャルシティ構想ではユーザーが自由にストリートライブやショップが展開できるといった、UGC(ユーザー生成コンテンツ)がコンセプトになっているという。今後はクリエイターが自由な活動ができる場を開放していくことで、ユーザーを増加させる狙いがあるようだ。
【参考動画】バーチャルシティ構想 コンセプトムービー
一方、ワントゥーテンでは、「リアルとバーチャルでインタラクションを交換し、共有する」といったメタバース構成が行われていると北島氏は説明する。具体的には、対象となる場をデジタルデータで複製し、デジタルツインを製作。永続的な座標を物理空間とデジタルツインの間で共有することで、インタラクションの共有ができるといった仕組みだ。
2021年10月にワントゥーテンは、イベントプラットフォーム「Smart Digital Field(スマート・デジタル・フィールド)」の販売を開始。オフラインとオンライン相互のインタラクションを体感できる技術を、新規の顧客体験プラットフォームとして実用化した形だ。
メタバースの人気が高まっている一方で、今後も本格的にトレンド化していくためには、様々な障壁を乗り越えていく必要があると中馬氏は警鐘を鳴らす。新型コロナウィルスの影響によってメタバースブームが前倒しされてしまったが、肝心のデバイスの普及が追いついていないため、グラフィックや最大接続数を落とさざるを得ない状況にあるという。
本来であればメタバース空間に300人〜1000人のユーザーを同時表示させることが可能なのだが、デバイスの動作環境に合わせて表示数を30人前後まで落としている状態にあるとのこと。メタバースの壮大な世界観を演出するためにも、5G端末など、高性能なデバイスの普及が今後の鍵を握っていると説明した。
メタバースには「ビッグIPでなく、スモールコミュニティから世界を引っ張って行けるポテンシャルがある」という中馬氏。最後に、「皆さんも(メタバースに)前向きに参加して頂きたいです」とメッセージを送り、本講演を締めくくった。
本記事でメタバースに興味が湧いた方は、これを機に1度プレイしてみてはいかがだろうか。『Fortnite』や『あつまれ どうぶつの森』など、気づけば私たちの周りには多くのメタバース空間が広がっている。
■ワントゥーテン主催「SUSTAINABLE CONNECT 2022」アーカイブ動画
【ワントゥーテン/1→10,Inc.】
について人間の永遠の課題に挑み、創造力で人類の可能性をひらく、近未来クリエイティブカンパニー。京都市下京区に本社をかまえ、最先端のAI技術を駆使したサービス開発やプロジェクションマッピング・XRを活用した数々のプロジェクトを日本国内及び世界各国で展開する。日本の伝統に創造性とテクノロジーを掛け合わせ日本をアップデートする「ジャパネスクプロジェクト」、パラスポーツとテクノロジーを組み合わせたスポーツエンタテインメント「CYBER SPORTSプロジェクト」など、先端テクノロジーによる社会課題解決をテーマに世界中の人々の知的好奇心をかき立て続ける。
【代表的なプロジェクト】
「ドバイ万博日本館」デジタルシフト施策の企画・製作、体験型商業施設「羽田出島|DEJIMA by 1→10」、知育エンターテインメント施設「ENNICHI by 1→10」、夜の旧芝離宮恩賜庭園や名古屋城でのライトアップイベント「YAKAI by 1→10」、市川海老蔵「歌舞伎座百三十年 七月大歌舞伎 夜の部 『通し狂言 源氏物語』」でのイマーシブ(没入型)プロジェクション、サイバーパラスポーツ「CYBER BOCCIA(サイバーボッチャ)S」・「CYBER WHEEL(サイバーウィル) X」、価値ある日本文化のつくり手を応援するファンコミュニティコマース「ENU(エヌ)」など。URL:https://www.1-10.com/