コロナ禍でもコミュニティを停滞させない。『逆転オセロニア』で目指した安心と安全のオンライン施策【CEDEC2021】

 2021年8月24日(火)から26日(木)までの3日間、日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC2021」(CEDEC=セデック:Computer  Entertainment Developers Conference 主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会、略称CESA)が開催。昨年に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大を防止する観点から本年もオンラインで開催された。

 本稿では、8月26日(木)に開催されたセッション「【コロナ禍】オンラインでのコミュニティマネジメント実践例」の模様をレポートしていく。

【講演者】

香城 卓
株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム事業本部 逆転オセロニア プロデューサー。1982年 石川県生まれ。中央大学卒。2011年2月に株式会社ディー・エヌ・エー入社。Mobageプラットフォームでのソーシャルゲーム運用・開発を経て、2014年より『逆転オセロニア』を企画・開発。「けいじぇい」の愛称で、同タイトルのプロデューサーに従事。

 

 

 

口コミがこそがユーザーにとっての最大の指標

 本講演では、オンラインイベントを多数開催し、ユーザーコミュニティの形成に力を入れていたスマートフォン向けRPG『逆転オセロニア(以下、オセロニア)』が、コロナ禍の時世に対応するために着手した、オンラインでのコミュニティマネジメントについて、プロデューサーの香城氏が語っている。

 『オセロニア』は、リリースから11ヶ月間アクティブユーザーがなかなか増えず、ヒットするまでにかなり時間がかかった。この11ヶ月間で運営陣は、各地でファンを繋げることに注力していた。

 データを見れば何万人のユーザーがいるのか簡単にわかるが、ユーザーはそれを知ることがない。ゲームをヒットさせるには、ユーザーコミュニティ力が必須と考えていた『オセロニア』運営陣は、「自分の町にもオセロニアン(『オセロニア』プレイヤーの総称)がいるんだ!」と思えるような体験をさせることで、ユーザーコミュニティの形成につなげていった。

 昨今は、自分の意思だけでもコンテンツを選択する人は少なく、口コミが大きな力を持っている。プロダクトそのものの力ではなく、”プロダクトを取り巻く人の集合知”が価値を決める時代になっていると香城氏は提言している。

 わかりやすい例として挙げたのは、ラーメン店を選ぶ際のシチュエーション。多くの人がグルメ口コミサイトのレビューを参考に店選びをする。この思考こそが現代の本質であり、コミュニティマネジメントでポジティブなユーザーの声を増やすことが、ゲームをヒットさせるためにも重要であるとしている。

 

『オセロニア』がこだわり続けたのは”安心と安全”

 『オセロニア』がユーザーコミュニティの形成のために力を入れているのがオフラインイベント。実例として挙げられた「オセロニアンの宴」は全国ツアー形式で、大きなホールを借りて開催していた。

 このイベントには香城氏も参加しており、ステージに登壇するだけにとどまらず、自身もユーザーとコミュニケーションを取って、ユーザーの声をくみ取っている。さらに、「オセロニアンの宴」で全国を巡る合間で、ネットカフェでの小規模イベントにも参加するなど、規模に関係なくユーザーとコミュニケーションできる場を重要視している。

 しかし、コロナウイルスの流行により、オフラインイベントの開催は難しくなってしまった。これにより地域コミュニティは停滞してしまい、ネットでもネガティブな意見が増えてしまったという。

 一度成熟したコミュニティであっても、コミュニティと接する機会が減ってしまうと一気に沈静化し、そのまま縮小してしまう。そこで、『オセロニアン』運営陣はオフラインイベントのオンライン化に着手し、コミュニティの活性化を図る。

 しかし、オフラインイベントの完全なる代替をオンラインに用意することはできない。その理由として香城氏は、人が周辺にいるのといないのとでは、大きな壁があるからだと言及した。

 そのため、オフラインイベントで重要視していた”安心と安全”を、どのようにオンラインイベントに落とし込むかという点に着目する。

 まず、『オセロニア』のオフラインイベントでは、オセロニアン(ユーザー)しかいない環境を作ることに注力していた。たとえば、ショッピングモールのような衆人環境下で開催すれば、ユーザー以外へのプロモーション効果はあるかもしれないが、集まってくれたユーザーにとってはあまり居心地が良い環境ではなく、ディープな会話もしづらい。

 オセロニアンしかいないと思える環境は、ユーザーが羽を伸ばして楽しむためには重要であるというのが香城氏の考え方だ。

 次に、オーディエンスにならない安心感だ。ショーを開催するので来てくださいというだけでは、ユーザーはオーディエンスのままで終わっている。ユーザーが参加できる、共感できるようなイベント形式で、自分もコミュニティの一員であると感じてもらうことが安心感につながるとのこと。

 最後に、コミュニケーションが生まれることへの安心感。イベントに集まってくれたからといって、だれもがコミュニケーションに対してアグレッシブではない。コミュニケーションをしてもいいですよという雰囲気ではなく、コミュニケーションするしかない、しないともったいないぐらいのシステムを運営側が用意すべきであるとも提言している。

 

大会からファンミーティングまですべてをオンライン開催

 ここからは、オンラインで開催したイベントの実例を紹介していく。まずは、Zoomを使った2on2の全国大会「オセロニアンダブルス」だ。誰とコンビを組んでもよく、試合中の相談も許可されている。

 2on2にした理由には大きくふたつあり、まずは安心して大会に参加できる点を挙げた。ひとりで大会に参加するとなると、試合中も待機中も孤独なうえに、スケジュールの確認や次の試合の準備などすべてがひとりになってしまう。この孤独感は、参加するうえでハードルになりやすい。この孤独感は2on2にするだけで解決できる。

 2on2にしたもうひとつの理由が、不正対策になるという点だ。完全な抑制ができるわけではなく、性善説に頼る部分は残るが、最初から相談することを許可してしまえば、あえて不正を働こうとする人は減るのではないかという考えに基づいている。

 ツールにZoomを選んだのは、コロナ禍の影響を受けて触れた人が多いツールがZoomであり、だれもが使いやすいツールだったというのが理由。

 また、Zoomにはブレイクアウトルームという機能があり、通話に参加しているメンバーを小さなルームに振り分けられる。対戦する2チームに集まってもらったのち、2部屋に振り分けて部屋内だけで通話できるようにするといった運用ができ、大会をスムーズに進行するうえで非常に有用であったことも大きかったようだ。

 オンライン大会を運営するうえでは、事務的にインフォメーションを出すだけでは、全体をシステマチックに動かすのは難しいことも懸念されたそうだが、これもZoomを使ったビデオ通話で解決している。選手の誘導をスタッフがビデオ通話で行なうことで、参加者も安心して参加でき、試合に集中できる環境ができあがる。

 オンラインイベント実例のふたつ目として紹介されたのは、ファンミーティングの「オセロニアンフェスタ」だった。

 このイベントは、ゲーム配信アプリ「ミラティブ」内で開催された。ファンミーティングをオンライン開催するとなると、どうしても公式チャンネルにゲストを呼んで、企画をたくさん実施するという内容を思い浮かべてしまうが、これでは一方的な配信と変わらず、ユーザーをオーディエンスにしてしまう。

 そこで、香城氏は発想を逆転させて、公式プレイヤーや開発陣がユーザーのチャンネルに遊びに行くという手法のファンミーティングを考案した。

 この形式だと、当然公式チャンネルの配信は回らないが、ゲーム配信者の配信を盛り上げていく方が、コミュニティ全体としては大きな効果が得られることについても、香城氏は言及した。

 公式チャンネルをオープンにして「いつでも来てください!」としたところで、ユーザーの多くは遠慮してしまう。しかし、ユーザーのチャンネルに遊びに行く分には、そこはユーザーたちのフィールドで安心感があるため、活き活きとした様子が見られる。

 これらの施策すべて安心と安全につながっている。オフラインイベントのオンライン化をするにあたっては、ツールやコンテンツの内容よりも、画面の向こうに安心と安全を届けられるかどうかが大きいのではないかと香城氏は推察している。

 

今後のコミュニティトレンドを香城氏が予想する

 ここまでは、『オセロニア』が行なってきた施策についての話だったが、ここからは香城氏によるコミュニティトレンドにまつわる予想について。

 まず、ひとつ目がコミュニティのクローズ化の加速だ。Discordのように、自分が好きな人たちとだけつながれるツールが流行った背景には、小規模なコミュニティを好む人が増えているからだと香城氏は考えている。

 TwitterやYoutubeのコメントのようなオープンな環境が必ずしもコミュニティにとって心地よいものではなくなってきているのではないかとも述べた。

 ふたつ目は、大コンテキスト(文脈や前後関係)の到来だ。コミュニティにおける運営のあり方は極めてパーソナリティな部分が大きい。ユーザーと触れるスタッフはホスピタリティ溢れる人ではないといけないし、動画でも言い方がキツい人は好まれない傾向がある。

 さらに、世間的に背景を重要視する傾向が強まってきており、その人の過去がどうであったのかというところまで見られるようになってきている。隠したことが見つかれば叩かれるし、公正さの重要度は高まっていくのではないかと提言した。

 3つ目は、スタープレイヤーではなくコミュニティリーダーの需要が増えるという点だ。これまで、ゲームが上手く、人を魅了できるようなプレイができるスタープレイヤーが求められてきたが、これからはコミュニティを盛り上げるリーダーが求められるようになってくると香城氏は予想している。

 ソーシャルライブに人が集まるとき、スタープレイヤーを見たくて集まっている人が多数ではあるが、その視聴者のなかから、そのスタープレイヤーのコミュニティを盛り上げる仕掛け人のような人が出てくるのではないかとも述べた。

 4つ目は、ゲームデザインからコミュニティデザインの時代へ移っていくという内容だ。新しい機能や、斬新なゲームサイクルを入れたとしても、ユーザーが刷新されないという風潮がこれから増えていく。

 お金や人力を投資することで、ユーザーに与えられるUXが向上するのは、一定のラインを超えたところで軟化してしまうと香城氏は考えており、プレイヤーを大事にしてくれるかどうかでゲームの価値が変わってくるのではないかと述べた。

 これからの方向性として、どんなコミュニティを形成し、そのコミュニティがどんな風にゲームに介入してくるのかが重要になると予測している。

 5つ目は、コミュニティマネジメントがナラティブ化するという。ナラティブという言葉について、現実世界を舞台にこのゲームはどんな挑戦をしてきて、どこへ向かっていくのかというストーリーに、ユーザーも参加して見届けていくという概念であると香城氏は説明している。

 ナラティブの実例として、『オセロニア』初の無観客イベントとなった5周年記念イベントで流した動画をピックアップしている。そこでは、キャラクターの新バージョンの公開情報のあと、ユーザーへのメッセージで締めくくっている。

 以上で、香城氏による「【コロナ禍】オンラインでのコミュニティマネジメント実践例」のセッションは終了した。

 なお、弊誌では過去に香城氏にインタビューを実施している。ここでは、運営4年目に起こった事件とその後の対応まで、ゲーム運営の妙が詰まった記事となっている。合わせてご覧いただければ幸いだ。

【関連記事】
突然のユーザー離脱からV字回復を成し遂げた理由…『逆転オセロニア』の実践例

 

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有馬 史也(Fumiya Arima)
ライター。ゲーム、アニメに関連した書籍やWEBメディアで、取材から記事執筆までを担当。2011年からフリーランスとして活動を継続し、主にインタビューやレビュー記事を制作。

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