『IDOLY PRIDE』分析。メディアミックス展開の大型アイドルプロジェクト

 スマートフォン向けアプリゲームの日々の運用とその効果を調査し、ゲーム関連企業へ様々データを提供するSp!cemart(スパイスマート)。世界各国のゲーム事業者に利用されている同社のサービス「LIVEOPSIS (ライブオプシス)」では、ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「イベントカレンダー」やTwitterトレンド情報、毎月発行の調査レポートなどが提供されている。

本稿では、「LIVEOPSIS」で確認できるランキング上位タイトルのアプリから、リリース後好調なアプリ『IDOLY PRIDE』の運用施策を分析し、紹介する。

 

アニメ先行の大型アイドルプロジェクト

リリース日:2021年6月22日
配信:QualiArts

 『IDOLY PRIDE (アイドリープライド)』は、サイバーエージェントグループ、ミュージックレイン、ストレートエッジの3社合同プロジェクトで、メディアミックス作品としてこれまでに楽曲のリリースや漫画、TVアニメなどで展開を続けてきた。

 原案にはTVアニメ「ラブライブ!」を手掛けた花田十輝氏が参画し、キャラクターデザイン原案に「ガーリッシュナンバー」「ガールフレンド(仮)」を手掛けたQP:flapper氏、楽曲制作に大石昌良氏、清竜人氏、さかいゆう氏など人気クリエイターが携わる。

 そして今回スマートフォン向けアプリとしてリリースされる本作は、アイドルのマネージャーとなって、女の子たちをトップアイドルに導くアイドル・マネジメントRPG。リリース後はストアの無料DLランキング1位、セールスランキング30位以内にランクインし、注目度の高い作品となっている。

 アプリ版『IDOLY PRIDE』は、物語の時間軸としてはTVアニメの後という位置づけだが、TVアニメのストーリーを追体験できるコンテンツもあるため、すでに楽しんでいたファンはもちろん、アプリから入るユーザーでも楽しめるようになっている。

 ゲームとしては、アイドルの”汗の表現”や、カメラワークにこだわった3Dライブパートが売りのひとつで、楽曲も相まってライブ演出に関してもハイクオリティな印象を受ける。

▲ライブ後のリザルトではキャラクターが汗をかいているなど、こだわりを感じるつくり。

 メインコンテンツとなるライブでは「スコアラー」、「バッファー」、「サポーター」といったタイプの異なるアイドルたちの中から5人1組で編成して、目標スコアを達成することを目指す。ライブ中のスキル発動などはオートで進むカジュアルな遊び心地で、ライブ演出を観ることに集中できる仕様。

 MVなどがありつつも、アイドル育成ゲームの定番のジャンルである“リズムゲーム”でないところは、意外性を感じるところ。同ジャンルの他タイトルとの差別化になっている。

 また、ゲームが進行すると解放される「お仕事」は、アプリを開いていない間でも自動で強化素材やファンを獲得できるシステム。オートプレイや放置要素があるため、隙間時間でも遊びやすいという印象だ。

 そのほか、目を引く要素としては「撮影」がある。「撮影」ではアイドルを自由に組み合わせて撮影を行い、写真をゲーム内で現像して「フォト」として入手することができる。

▲「フォト」はライブの際に装備アイテムとして使用することもでき、編成のステータスアップに役立つ。

 メッセージ機能やアイドルから電話が掛かってくる演出など、キャラクターたちをより身近に感じられる仕掛けが用意されているのも魅力的。

 

ミュージックレイン所属声優をプッシュしたプロモーション

 まずは、本作のリリース前後のプロモ施策をおさらい。

【リリース前後のトピック】

  • 2019年11月27日:プロジェクト始動
  • 2020年8月30日:「IDOLY PRIDE ミュージックプログラム」開始
  • 2021年1月10日:TVアニメ放送開始
  • 2021年1月11日:事前登録受付開始
  • 2021年4月16日:ゲームストーリー紹介動画を10週連続で公開開始
  • 2021年6月24日:サービス開始

 プロジェクト始動直後は、豊崎愛生さん、麻倉ももさん、雨宮天さん、夏川椎菜さんといった人気声優を推し出したプロモーションを展開。『IDOLY PRIDE』の詳細を伝えると共に、公式番組と連動したTwitter施策を行い、ファンを中心に盛り上げていた。

 Twitter上で行われたRTキャンペーンでは、報酬に番組に出演した声優のサイン入りポスター等を用意。早い段階からロゴ入りTシャツなどのオリジナルグッズが制作されていて、「メディアミックスの大型アイドルプロジェクト」という触れ込み通りの力の入れようとなっている。

 Twitter施策と連動した番組は、放送後「#IDOLYPRIDE」がトレンドで1位になるなど、かなりの注目を集めていた模様。

 また、楽曲リリースも情報公開から早い段階で行っている。ミュージックレイン所属の声優ユニットがそのまま起用されているため、もともとのファンが本作に興味を持つきっかけにもなっている。

 その後も生放送やRTキャンペーンを続け、サイン入りポスターなどの報酬で声優ファンに訴求した。Twitter上ではキャンペーンごとに3,000前後のRTを獲得。ちなみに、プレゼントの種類として定番のAmazonギフト券は、確認した限りでは採用されていなかった。

 そして2020年8月30日からは、「IDOLY PRIDE ミュージックプログラム」を公開。神田沙也加さんをはじめとしたキャスト陣がバーチャルライブなどのパフォーマンスを披露しているのが見どころ。トークパートでは本作の最新情報も公開され、担当声優がキャラクターの魅力を伝えるコーナーなども確認できた。

 TVアニメ放映と同時期に始まった事前登録キャンペーンでは、ガチャ関連のアイテムが並んだわかりやすい報酬に加え、抽選で10人に「黄金の名刺」が当たるチャンスに。抽選にはTwitterから参加することができ、純金製のオリジナル名刺がもらえるというユニークな試みとなった。

【事前登録の報酬一覧】

  • 10万人突破:ガチャ10回分ダイヤ
  • 20万人突破:最高レア確定ガチャチケット
  • 30万人突破:あなただけの黄金の名刺を抽選で10名にプレゼント
  • 40万人突破:ガチャチケット10枚

 なお、TVアニメ放映期間は2021年1月10日~3月28日だが、4月以降も再放送を実施している。

 プロジェクト始動からアプリがリリースされるまでの間、メディアミックスでさまざまなコンテンツを展開しつつ、公式チャンネル等で魅力を深堀りしていた。プロモーションの規模感はかなり大きめといえる。

    

お得なスタートダッシュパックを販売

 本作の主なマネタイズはブルーダイヤの販売となる。ブルーダイヤはガチャや、ショップ、自主トレの時間短縮などに使用する。なお、ブルーダイヤは有償、レッドダイヤは無償という点以外は使い道が同じアイテムとなる。

【ブルーダイヤのラインナップ】

  • 120個(120円)
  • 490個(490円)
  • 980個(980円)
  • 1960個(1,960円)
  • 2940個(2,940円)
  • 4900個(4,900円)
  • 10000個(10,000円)

 いずれのブルーダイヤも1個=1円換算で購入できる。

 また、お得なパッケージは基本的に「値段分のブルーダイヤ(1個=1円)+付加価値(アイテムやレッドダイヤ)」で統一されている。ダイヤ自体の値段は据え置きということなので、単体で購入する前に、お得なパッケージを利用するユーザーがほとんどだと考えられる。

 なかでも新規ユーザーに人気なのは、序盤から確定で最高レアリティのキャラクターを獲得できるスタートダッシュパックだろう。

   

・スタートダッシュパック(2,940円)<ブルーダイヤ2940個/★5確定ガチャチケ/スキップウォッチ×3>
※スキップウォッチは時間短縮アイテム

 そのほか、定番の「毎日ログインパック」やゲームの進行に応じてレッドダイヤが還元される「メインライブクリアパック」などがラインナップしている。

・毎日ログインパック(610円)<購入時ブルーダイヤ610個/30日間毎日レッドダイヤ100個→合計3610個>
・メインライブクリアパック(2,940円)<購入時ブルーダイヤ2940個/メインライブクリアで合計9440個>

 そして、本作のガチャはブルーダイヤ(orレッドダイヤ)を使用することで引くことができる。1回につき300個、10連で2700個(1回分お得)が必要。また、ブルーダイヤ限定で1日に1回90個で引くことができる。

 排出されるレアリティは★5~★3となり、確率は★5(3.5%)>★4(15.0%)>★3(81.5%)となる。

 本作はアイドルを育成するゲームのためキャラ推しの側面が強く、ガチャで排出されると衣装などもアンロックできるため、好きなキャラクターが実装された場合には十分な課金動機となりうる。

     

Vtuberを起用した施策も実施

 そのほかの試みとして、2021年6月28日にはホロライブプロダクション所属の Vtuber「大空スバル」さんと「桃鈴ねね」さんがゲームをプレイし、ライブを遊んだり、撮影機能を使って対決する「ウチの子しか勝たん!!アイドル撮影対決!!」の、昼夜2回にわたった生配信を実施。

 フォト機能を使ったユーザー参加型の企画も行い、Vtuberファンを巻き込むことで本作のさらなる拡散をはかった。7月からはさらにTVアニメの再放送を夕方に行っている『IDOLY PRIDE』。新たなユーザー獲得に向けた動きに要注目だ。

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