エイチームは2022年7月期の第1四半期(2021年8月~10月)の決算を発表した。業績は以下の通り。
売上高 73億3,400万円(前年同期比2.1%減)
営業損益 2億5,200万円の赤字(前年同期3億7,800万円の黒字)
経常損益 2億4,200万円の赤字(前年同期3億9,300万円の黒字)
最終損益 1億4,500万円の赤字(前年同期2億5,800万円の黒字)
2021年11月27日にリリースした大型新作『FINAL FANTASY Ⅶ THE FIRST SOLDIER』の開発費がかさみ、第1四半期は赤字となった。コロナ禍の影響でゲーム以外の事業も前年同期で減益に終わった。
ライフスタイルサポート事業
ライフスタイルサポート事業では、結婚式場情報サイト「ハナユメ」、引越し業者見積サービス「引越し侍」、プログラマー向け情報共有サイト「Qiita」および転職情報サイト「Qiita Jobs」などを展開している。
セグメント売上高は50億2,100万円(前年同期比5.8%増)、セグメント利益は1億9,200万円(前年同期比57.0%減)の増収減益となった。「Qiita」「Qiita Jobs」のほか、車の査定・買取サイトの「ナビクル」が好調に売上を伸ばしたが、コロナ禍の影響が続く「ハナユメ」と金融情報サイト「ナビナビキャッシング」等の不調をカバーしきれず、減益に。
エンターテインメント事業
『ヴァルキリーコネクト』(2016年)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-』(2018年)などのモバイルゲームを配信しているエンターテインメント事業では、バトルロイヤルゲーム『FINAL FANTASY Ⅶ THE FIRST SOLDIER』のリリースが大きく影響した。
既存タイトルがふるわなかったところに大型タイトルの開発費が響き、セグメント売上高は14億7,900万円(前年同期比17.1%減)、セグメント損益は1億6,000万円の赤字(前年同期は9,300万円の黒字)となった。第1四半期の営業損益のうち、エンターテインメント事業の赤字が約6割を占めた。
『FINAL FANTASY Ⅶ THE FIRST SOLDIER』は、スクウェア・エニックスの代表作『FINAL FANTASY Ⅶ』の世界観をそのままに、最大75人で繰り広げられるバトルロイヤルアクションゲーム。リリース前の11月16日にはiOS App Storeのゲームカテゴリでダウンロードランキング1位となり、その後も高い順位を維持している。
世界一斉配信(中国本土を除く)で、配信国の約1/3の地域でゲームカテゴリのダウンロードランキングでTOP 10に入った。まずは十分なユーザー数を獲得したと見られる。
その一方で、ゲームバランスやマッチングの不具合が多く報告されている。ユーザー数が相当数いるからこその課題と言えるだろう。12月8日にはバランス調整に関するアップデートの予告があった。素早い対応が期待される。
App Annieの調査では2021年にワールドワイドで急成長したゲームアプリとして『Garena Free Fire』(配信元:GARENA INTERNATIONAL)を挙げており(関連記事)、バトルロイヤルゲームは世界各国で一大ジャンルとなっている。海外展開を強みとするエイチームが『FINAL FANTASY Ⅶ THE FIRST SOLDIER』でどこまでシェアを拡大できるかが今後の焦点だ。
ユーザーを獲得するにはプロモーションが欠かせない。第1四半期では広告費に目立った増加はなかったものの、第2四半期以降に広告費が増大する可能性はある。
リリース直前には女優の浜辺美波さんを起用したTVCMを展開し、優れたクリエイティブを見せた。
しかし今後は単発の施策よりも、いかに積極的な投資を続けられるかどうかが成否のカギを握る。『FINAL FANTASY Ⅶ THE FIRST SOLDIER』単体の収益拡大も重要ではあるが、ライフスタイルサポート事業およびEC事業で十分な収益を確保しておく必要があるだろう。エイチームの実力が試されている。
EC事業
自転車専門通販サイトの「cyma-サイマ-」などを展開するEC事業部は、セグメント売上高8億3,300万円(前年同期比13.5%減)、セグメント損失は3,400万円の赤字(前年同期は7,400万円の黒字)となった。前年はコロナ禍の特需で売上高・利益ともに大きく上昇したため前年同期比では減収減益となったが、事業の成長基調は続いている。今後は在庫回転率の改善など、さらに厳密な在庫管理オペレーションを目指す。
なお、直近では2021年8月30日に高級ドッグフードのECサイト「Obremo(オブレモ)」をオープンした。合成添加物未使用の国産ドッグフードを、獣医師監修のもと、犬種や年齢に応じた最適なメニューで提供する。早期に利用者を獲得できれば、通期で赤字幅の縮小に貢献できるだろう。
今後の見通し
『FINAL FANTASY Ⅶ THE FIRST SOLDIER』の運営によって業績が大きく左右されることから、2022年7月期の業績予想は非開示。