Unity Technologiesは現地時間7月13日、ironSourceを完全子会社とする合併契約締結の合意を発表した。同契約ではironSourceの普通株式1株をUnityの普通株式0.1089株に転換しする株式交換により、Unityの株主が約73.5%、ironSourceの株主が約26.5%の割合で統合会社の株式を所有することになる。全株式の取引によるironSourceの評価額は約44億ドルとなる見込み。
取引は2022年12月期第4四半期中に完了する予定となり、完了後はironSourceのCEOであるTomer Bar-Zeev氏はUnityの取締役会および経営陣に就任するという。加えて、同社の取締役2名がUnityの取締役に追加で就任予定とのこと。
イスラエルに本拠を置くIronSourceは、開発者がモバイルアプリをマネタイズし、ビジネスとして最適化させるためのプラットフォームを提供する企業。
Unity Technologiesは完全子会社化の経緯として、同社が提供するゲームエンジン「Unity」とのシナジーを挙げており、あらゆる規模のクリエイターに対して提供するサービスを強化する狙い。
両社が今回の発表を「クリエイターの成功を支援する業界初のエンドツーエンド・プラットフォームを構築」するとしてアピールする一方、Unity TechnologiesのCEOであるJohn Riccitiello氏の発言が波紋を広げる一幕も。
同氏は北米のモバイルゲーム情報サイト「Pocket Gamer.biz」のインタビュー内で、今回の合併について言及。
記事内では、両社の協業によって「ゲーム制作プロセスにおいて、早い段階でマネタイズの方法を構築し、ビジネスとして転換できるようになる」というメリットを提示しながらも、一部のクリエイターは早い段階でマネタイズの仕組みを構築することに消極的である事実にも触れた。
そして、そうしたクリエイターについてJohn Riccitiello氏が「彼らは最も美しく、純粋で素晴らしい人たちだが、同時に最も愚かな人たちでもある」(they’re the most beautiful and pure, brilliant people. They’re also some of the biggest fucking idiots.)という発言を行う流れがあった。
この発言内の「fucking idiots」(直訳で「くそばか」とされる強い罵倒表現)という言葉はPocket Gamerにもセンセーショナルな見出しとして使用され、海外メディアを中心に拡散。
記事にはマーケティング担当者やパブリッシャーに丸投げされがちなマネタイズやフィードバックを透明化し、開発者がアクセスできるようにサポートするという主旨の説明も見られたものの、上記の発言に大きな注目が集まり、一部クリエイターもTwitterなどSNS上で反応する事態となった。
John Riccitiello氏は上記の発言が取り沙汰されたことについて、当初は「文脈から外れたクリックベイト(釣りタイトル)である」と批判的であったが、現在は「言葉の選び方が下品だった」として謝罪を行っている。
なお、ゲームユーザーや開発者からの懸念はそれだけにとどまらない。ironSourcesは、かつてマルウェアとして危険視されたソフトウェアバンドラー「InstallCore」(2020年に廃止)を開発した会社であるとして、合併自体に疑念を覚える声も見受けられた。「InstallCore」は、2015年にマイクロソフトのセキュリティ対策ソフト「Microsoft Defender」で望ましくないアプリケーションに分類されている。
SNS上では、インディーゲームのコンソール移植を手掛けるゲームスタジオSpoiled Catを運営するAndreia Gaita氏や『Celeste』のデザイナー・Noel Berry氏などが疑問を投げかけた。