消費者庁は12月27日、広告主が自らの広告であることを隠したまま宣伝を行う「ステルスマーケティング」(ステマ)についての有識者検討会を実施し、「業界団体等の自主規制のみでは対応できず、景品表示法による規制の必要性がある」と報告書にまとめた。今後、法規制に向けた運用基準等の策定を行う方針を固めている。
ステマを巡っては、企業の依頼を受けた宣伝にも関わらず、インフルエンサーが第三者を装い、まるで個人の感想のように情報を拡散することが、消費者にとって正確な情報が得られない可能性があるものとして問題視されてきた。
近年のインターネット広告市場は、マスメディア4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告市場規模を上回るなど拡大が著しい。特にSNS上で展開される広告は増加しており、それに伴ってステマ問題がより顕在化している状況。2022年には、大手SNS「TikTok」がTwitter上でステマを行い問題になった。
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その一方、こうしたステマは消費者庁が所管する景品表示法における「一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為」にあたるとされるが、現状の景品表示法では、ステマを直接的に規制することができない。すでに諸外国では、ステルスマーケティングに対する法規制が存在しているのに対して、日本においては法規制の整備が不完全となっている。

※図は消費者庁「ステルスマーケティングに関する検討会 報告書(案)」より
これを受け、消費者庁は2022年9月より、インターネット広告市場の健全な発展に向けた対応方策を検討・議論する会を開催してきた。
開催にあたって行われた関係事業者等からのヒアリングによれば、「『広告』である旨を明示しない広告は、少なくとも確実に20%程度は増加する」「純粋な感想や口コミと思わせる広告の方が一般消費者を誘引し、売上につながる」など、ステマによる売上効果が相当に高いことをうかがわせる声が挙がったという。そのため、「景品表示法で規制されていない以上は、ステマは広告主にとって大きなインセンティブになる」というのが事業者にとって正直なところとなっていた。
またインフルエンサー側も、アンケート調査を受けた300人のうち41%(123人)のインフルエンサーが「ステマを広告主から依頼された」と回答し、さらにその約45%(55人)が実際に「全部受けた」または「一部受けた」と回答。一連のヒアリングにより、実態としてステマが横行している事実が浮き彫りとなっている。
これらを受け、規制案ではステマを不当表示の類型として「景品表示法第5条第3号の告示に新たに指定することが妥当」と結論付けられている。規制対象となるのはインターネット、テレビ、新聞など媒体は問わない。

具体的な規制方法としては、消費者が広告かどうかを判別できるよう、事業者には「広告」「PR」などの文言でわかりやすい表示を求める。
また、事業者への規制を行う一方、インフルエンサーがステマの依頼を受けてしまう理由が「ステルスマーケティングに対する理解が低かった」ことに起因するとして、今後は消費者を含めた周知活動の必要性も言及された。
ゲーム業界においても、昨今は動画投稿や配信の依頼によるマーケティング施策は珍しくないものとなっているため、少なくない影響があるものと考えられる。法規制の適用時期は現時点で不明だが、運用基準の策定など今後の動きに要注目だ。