GOTYに輝いた『It Takes Two』の開発秘話 講演で明らかになった開発過程・課題とは 

 NetEase Gamesは4月18日から21日にかけて「NetEase Games開発者サミット2022」を開催中。イベント期間中に行われるハイライト講演が同社の公式YouTubeチャンネルで無料公開されている。

 イベント初日にはゲーム・オブ・ザ・イヤーなど数々の受賞歴を持つ『It Takes Two』のリードレベルデザイナーを務めたFilip Coulianos氏と、「龍が如く」や「JUDGE EYES」のプロデューサーを務めた名越稔洋氏が講演を行った。

 Filip Coulianos氏は、『It Takes Two』における誕生の背景からゲーム開発、開発プロセスにおいて浮き彫りとなったチームレベルでの課題までを講演。

 おさらいしておくと、『It Takes Two』は全編Co-op(2人以上のプレイヤーによる協力プレイ)によって進行する、さまざまな要素を盛り込んだプラットフォームアドベンチャーゲーム。魔法にかけられて人形になってしまった、仲違い中のカップルであるコーディとメイを操作して困難に挑んでいく内容。

 渋々ながら協力するふたりの様子など、ゲーム内ストーリーの魅力に加え、オンライン協力プレイでは片方のユーザーがゲームを所持していれば無料でプレイできる「フレンドパス」システムがあるのが特徴。

 講演内では、同作で採用されているゲームエンジンUnreal Engine4におけるAngelscriptの導入事例や、実際のワークフローなどが紹介された。

 Angelscriptの導入事例では、レベルデザインチームとゲームプレイ担当のプログラマーが同じツールを使用することで、デザイナーがゲームプレイ開発に能動的に参加できるように。デザイナーは自分が考えたアイデアを、ゲームで実装に至るまで全過程で関与することが可能となる。

 Coulianos氏はデザイナーとプログラマーの境界線が曖昧になっていく変化を「素晴らしい変化」と捉え、「分業化が進む昨今において、誰もがユーザーエクスペリエンスのことを考えるようになった」と語った。

▲担当以外の仕事が増えることについては「リスクがある」としながらも、「このようなゲームを作るにはルールを破らないとできない」と持論を述べた。

 ワークフローについては、まず背景設定やストーリーなどの「ストーリーボード」から開始し、次に設定に適応するレベルデザインを構想。テストでのフィードバックを経てゲームプレイに問題がなければ、「どのようにこのカットシーンに到達するか」などストーリーに沿ったゲームプレイへの背景を与え、プロット全体に統合させていく。

 なお、アイデアを実装する際には、スケジュール的都合による技術的問題などを加味して、ギミックなどの機能をシンプルに調整することも行っているという。また、協力プレイがテーマなだけに、プレイヤー間の交流が必要になるアイデアを多く盛り込んでいるようだ。ちなみに、講演で例に登場した「Dino Land」はレベル全体を作成するのに数週間ほどしか掛けていないことも明かされた。

 一方、名越氏は、文化的にニッチなゲームを成長する世界市場に投入する方法について講演を行った。名越氏といえば、今年1月24日にNetEase Gamesが100%出資を行う「名越スタジオ」の設立を発表し、その代表取締役に就任している(関連記事)。同スタジオは高品質な家庭用ゲーム機向けタイトルの開発に注力し、グローバルに展開していく方針を打ち立てている。

 今後はほかにも、グラスホッパー・マニファクチュアの創設者で「ノーモア★ヒーローズ」シリーズを生み出した須田剛一氏が、ゲーム開発者が自身のスタイルと市場の好みを両立する上で克服すべき課題について講演予定。

 また、クアンティック・ドリームのモーションキャプチャ担当ディレクターBenjamin Diebling氏が、クアンティック・ドリームの業界をリードするモーションキャプチャ技術の成長と発展について語る予定となっている。いずれも公式Youtubeチャンネルから視聴が可能だ。

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森口 拓海(Takumi Moriguchi)
森口 拓海(Takumi Moriguchi)
雑誌やWEBメディアを中心に記事を執筆。ゲームは雑食で多様なジャンルを好み、業務の延長でアプリ分析も得意。恩のあるゲーム業界に貢献すべく日々情報を発信。

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