サウジアラビア、5兆円規模のゲーム・esports分野への投資戦略について「2023年はゲームのパブリッシングと開発により集中する」と言及 

 サウジアラビア政府が昨年9月より明らかにしているゲーム・esports分野への5兆円規模の投資戦略について、2023年の動向が明らかとなった。海外メディアBloombergが報じている。

 サウジアラビアでは現在、政府系ファンドPublic Investment Fund(パブリック・インベストメント・ファンド/PIF)を通じて、同国のゲーム・esports分野に1,420億リヤル(約5兆円)を投資する計画が明らかにされている。

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 投資額のうち、500億リヤル(約1兆7,400億円)が戦略的開発パートナーとなる大手ゲームパブリッシャーの買収とゲーム開発に充当。また、700億リヤル(約2兆4,400億円)は、同社のゲーム開発方針をサポートする主要企業の少数株主投資に充当。ほか20億リヤル(約700億円)を起業直後のゲーム・esports企業に、200億リヤル(約7,000億円)を同社のパートナー企業に投資する計画。

 報道によると、具体的な投資先のひとつはPIFの子会社であるSavvy Gaming Groupであるとされ、有力な海外企業のM&Aだけでなく、自社開発・パブリッシングするゲームプロジェクトも模索しているという。

 Savvy Gaming Groupは、PIFが所有するゲームおよびesports関連企業。グループCEOは、かつてElectronic ArtsやMicrosoft に在籍し、Activision Blizzardではワールドワイドスタジオの責任者を務めた業界歴25年以上のベテランであるBrian Ward氏が務める。

 同社はこれまで、スウェーデンのModern Times Groupから世界最大のesports企業「ESL」や、イギリスのesportsプラットフォーム「FACEIT」を買収するなど、esports事業の取り組みが目立っていた。これからはesportsビジネスに加えて、新規IPの創出にも積極的に動き始める。

 そのほか、Savvy Games Groupでは人材育成や起業の機会を提供するために、国内外のプログラムやインフラに投資するとともに、国際企業をサウジアラビアに招聘し、スキルの提供、知識の共有、エコシステム全体における能力開発を図る。

 なおPIFは任天堂の株式における8.26%、カプコンの6.09%、コーエーテクモホールディングスの5.03%、ネクソンの9.14%株式など、東証上場企業の株式も多数保有。NASDAQ上場企業であるEmbracer Groupの8.1%株式も保有している。

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 サウジアラビアがゲームへの投資に力を入れる背景として、同国をはじめとした中東の産油・ガス国では近年、脱炭素化の取り組みが加速している点が挙げられる。これに伴って、化石燃料だけに頼らない形での経済の多様化が求められており、中でもサウジアラビアはゲーム・esports分野でのイノベーションに可能性を見出している状況だ。

 中国の調査会社Niko Partnersが公開しているレポートによると2022年、サウジアラビアを含むMENA-3地域(エジプト・サウジアラビア・UAE)のゲーム市場は18億ドル(約2,400億円)となり、2026年に28億ドルと5年CAGRで10%近く増加すると予測されている。いずれも高成長が見込まれる新興市場で、サウジアラビアは特に売上高の高い市場とされ、2100万人のゲームユーザーを抱えている。

 投資戦略によると今後、サウジアラビアは国内に250のゲーム会社を設立し、39,000人の雇用を創出。これらの取り組みによって、2030年までに同分野のGDP貢献度を500億リヤル(約1兆7,400億円)に引き上げるとしている。

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森口 拓海(Takumi Moriguchi)
森口 拓海(Takumi Moriguchi)
雑誌やWEBメディアを中心に記事を執筆。ゲームは雑食で多様なジャンルを好み、業務の延長でアプリ分析も得意。恩のあるゲーム業界に貢献すべく日々情報を発信。

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