類まれな実況センスと、全国トップクラスのゲームスキルでファンを魅了。信頼できるオタクの星「社築(やしろきずく)」解説

 今回特集するゲーム実況者チャンネルは、バーチャルライバー(バーチャルYouTuber)グループ・にじさんじに所属・活動する「社築(やしろきずく)」さん。ゲームのプレイスキルの高さや実況の面白さはもちろん、なんといってもコンテンツへのリスペクトを随所に感じる、いわゆる“信頼できるオタク”として人気を博し、常に話題のつきない人物だ。

 社さんは、元にじさんじSEEDs1期生として、2018年6月3日にデビュー(現在は、SEEDsなどの枠組みは撤廃された)。“やしきず”の愛称で親しまれ、チャンネル登録者数は54万人を突破、配信・動画の累計視聴数は1億を優に超えるなど、グループの中でもかなりの人気ライバーとなっている。

 

無尽蔵のネタの猛襲! 安定した実況の面白さ

 社さんの配信を一度でも見たことがある人であれば感じると思うのが、唯一無二の“実況の面白さ・上手さ”だろう。配信開始時は低めのテンションから始まり、ここぞという場面で120%のテンションでリアクションしてくれる。喋らないタイミングがほとんどないのも、視聴者を飽きさせない工夫のように感じられる部分だ。

 また、常々発せられるボケやツッコミには、ほとんど何かしらの元ネタがあるのも特徴。『ジョジョの奇妙な冒険』や『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』などの有名なネタは序の口で、ゲーム『ロマンシング サ・ガ』のカール・アウグスト・ナイトハルト殿下や、アニメ版『星のカービィ』など、挙げると枚挙にいとまがない。実況中はまさにネタの宝庫と化しており、“人間音MAD”と言っても過言ではないだろう。

 本人は「ただのオタク」を自称しているが、そのオタクレベルの濃さには目を見張るものがある。一時期のニコニコ動画で流行したネタが多いため、配信のコメント欄がまるでニコニコ動画のようになることもしばしば。他のメンバーとコラボをした際は、サブカルチャーネタであればほとんど拾えるために重宝される場面もあるが、逆にネタが通じなかったりすることも。

 その分、共通の趣味があり、世代が近いメンバーの花畑チャイカさんや加賀美ハヤトさんとは、とても仲が良いことがうかがえる。とはいえ、頻繁にコラボするというわけではなく、稀に企画配信で一緒に登場したり、話題としてあげられたりなど、とてもちょうどよい距離感であることが感じられる関係だ。

 実況するゲームタイトルに関しては、リズムゲームやレトロゲーム、アクションゲームなど、多種多様なジャンルを遊んでいる。自分が気になったものや好きなシリーズをプレイしており、流行に合わせてタイトルを選ぶということは、あまりしていない印象を受ける。本当に自分がやりたいゲームを全力で楽しんでいるからこそ、配信のクオリティを高く保ち続けられているのだろう。

 また、公式プロフィールで紹介されている通り、プログラマーとしての一面も持っているためPCへの理解や知識も深く、他のメンバーの配信トラブルを解決したり、アドバイスしているシーンを各所で見られる。プログラマーとしての知識・経験を生かした『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』は、再生数も非常に伸びている、かなりの人気配信となった。

 プログラマーという苦労の絶えない職業や、社築という名前からも感じられるが、いわゆる“社畜”の一面もある。しかし、最近の配信ではそのような気配はあまり感じさせなくなったため、待遇が改善されていることを願いたい限りだ。ちなみに、プログラマーとしての社さんのリアル上司が、配信に登場したことがある。

▲上司登場は23:58あたり。

 

「好きこそものの上手なれ」を体現する、プレイスキルの高さ

 ここまで、ゲーム実況の上手さ、面白さに関して触れたが、その(ゲームの)プレイスキルの高さも目を見張るものがある。特に、好きで長く続けていると公言している“リズムゲーム“に関しては、全国で見てもトップクラスに位置するだろう。

 長年続けているという『beatmania IIDX』は、たびたび配信でその類まれな腕前を披露しているほか、世界でも達成者が極めて少ないと言われている「音楽(A)」のフルコンボを成し遂げている。

 また、『beatmania IIDX』が上手くなるために試行錯誤したところ、左手の中指を折り曲げながら、親指と小指を水平にするという、ピアニストのようなことができるようになるしかなかったとか。「リズムゲームでトップを目指すには、人間をやめなければいけない」とはよく言うが、社さんもそのひとりらしい。

 曲自体に関しての知識もかなり広く、元KONAMI公式プロプレイヤーであり、現在はBEMANI PRO LEAGUEのプロ選手として活躍するDOLCE.さんとのコラボでは、同氏を感心させるほどの曲解説を行っていた。なお、このコラボをきっかけに、『NHK 沼にハマってきいてみた』をはじめとした、さまざまな公式放送などで共演している。また、社さんはBEMANI PRO LEAGUEのチーム監督を務めたこともある。

 現在、社さんが特にプレイしているリズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』は、リリース前にプロモーション案件を担当したことをきっかけにのめりこむようになり、配信でもたびたびプレイするようになっただけでなく、公式大会での解説や、自身も競技シーンに出るまでに至っている。

 ここまで解説しただけでもかなりの腕前を持っていることがわかると思うが、社さんが凄いのは、 これらを“実況しながらできること”。

 リズムゲームを遊んだことがある人ならわかると思うのだが、プレイに集中している状態かつ面白くなるように話すことなど、到底不可能なのだ。しかも、社さんの場合はコメント欄すら確認しながら話している。この圧倒的マルチタスクは、到底真似できるものではない、唯一無二の個性だろう。

 また、普段からよくプレイしているアクションゲームの腕もピカイチ。デビュー当初からレトロゲームなどで高いプレイスキルを披露していたが、「あまり3Dのゲームはやらない」と言っていたなか始めた『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』から、さらに顕著に見られるようになる。

 通常、クリアすることも一苦労であるタイトルであるのだが、縛り要素込みで3つあるエンディングをすべて見ただけでなく、RTAにも挑戦。世界で見てもトップクラスに入る記録を叩き出していた。さらに、同タイトルと同じ開発会社のタイトル『Bloodborne』では、“栗本チャレンジ”と呼ばれる難関縛りプレイに挑戦し、見事達成した。

 

案件配信も多数こなしながら、
コンテンツへのリスペクトも忘れない

 社さんは、自分が好きなものを発信することを大事にしている。そして、好きなコンテンツであることを発言し続けた結果、案件の担当を依頼されたという事例も多くある。例えば『メトロイド ドレッド』の案件では、社さんが『メトロイド』シリーズを実況し、幾度も好きと公言していたことからも伺える。ちなみに案件終了後も配信でプレイし、エンディングまでクリアした。

 カードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』は、デビューして間もないころからプロツアーの予選にも参加するほど熱心に遊んでいることを明言していたところ、公式の案件を担当することになった。年末には、メンバーの加賀美ハヤトさんと共に、特注の100万円福袋開封配信も行っている。ちなみに、自身の配信ではないものの、ネット対戦でプロを1ターンで撃破している様子を写したシーンがあった。

 これらはほんの一部であり、さまざまな案件などに引っ張りだこの状態である。これは、社さんが全力でゲームと向き合っているため、見ている視聴者も楽しみになってくることからだろう。また、 どのようなゲームでも基本的にマイナスなことを言わず、コンテンツを大事にしている様子が見て取れるのも大きいはずだ。

 これらのゲームに対する姿勢を見込まれてか、にじさんじ公式によるゲーム番組『ヤシロ&ササキのレバガチャダイパン』のMCを、笹木咲さんと共に務めている。リアルイベントの開催や、年末にはTOKYO MXで放送されるなど、かなりの人気を誇っており、ここからにじさんじというグループを知るという人もいるだろう。

 

大人の安心感と、ここぞというシーンでのギャップ

人気となった要因のひとつに、“安心感がある”ことが一因だと考えられる。 たまに語られる社会人エピソードやその立ち振る舞いからは、いわゆる社会で揉まれて生きてきた大人を感じさせ、他人やコンテンツをけなすようなことを言わないなど、ネットリテラシーもしっかりしている。

 なにかと炎上というワードが付きまとうインターネットのコンテンツを視聴するうえで、そこを気にしなくていいというだけでも、見やすさ・推しやすさが大幅に向上するだろう。

 その一例として挙げられるのが、“♯社起きろ”という珍事件だ。過去のコラボ配信でお酒を飲んでいたところ、OBS(配信ソフト)を担当している状態で寝てしまい、配信が閉じられなくなってしまうという出来事があった。

 深夜に“♯社起きろ”というハッシュタグのトレンド入りを2回果たしたのち、いっさい配信でお酒を飲まなくなった。かなり前の配信であるうえ、視聴者からは「飲んでほしい」という声もあるだろうが、このルールは現在でも徹底している。

▲お酒でやらかしたメンバーを集めて行われた禊配信。

 また、バーチャルYouTuberと言えば、容姿が自在に設定できることから、イケメンや美少女の印象が強いはずだ。企業所属であればなおさらである。

 その中だと、しっかり“一般社員“感を感じさせる社さんの容姿は異例といえる。このことが逆にインパクトとなっており、「社築といえばこの顔だ」という記憶に残りやすいうえ、「かけ離れた存在ではない」という親近感を抱かせるようになっている。

 そのうえで、グッズ販売や、音楽ライブなども行っているのだが、この際に見せてくれる正統派なカッコよさとのギャップによって、ファンはなお引き付けられていく。サブカルネタに魅了された男性ファンだけでなく、女性ファンの割合も多いのは、このあたりも要因のひとつではないだろうか。

▲2022年1月22~23日に行われるライブイベント『にじさんじ 4th Anniversary LIVE「FANTASIA」』にも出演予定。

 

まとめ

 ここまで「社築」さんについてまとめてきたが、改めて配信を見ていくごとに、実況の面白さ、ゲームのうまさ、キャラクター性など、現代のゲーム配信者として必要な要素をいくつも備えている人物であると感じられた。気になったひとは是非視聴してみて、飲み友(ファンの名称)のひとりになってみてほしい。

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寺村 一也(Kazuya Teramura)
寺村 一也(Kazuya Teramura)
ライター。ゲームに関連した書籍・WEBメディアで記事を執筆する傍ら、ゲーム実況・VTuber文化にも精通。幼少期からゲームを遊ぶ時間に制限があったものの、説明書や攻略本など関連書籍を読み漁りゲームの魅力に触れていく。その経験からプレイ以外の「観て楽しむ」という実況文化を学ぶようになる。

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