Activision BlizzardのCEO・Bobby Kotick氏、マイクロソフトによる買収に合意した理由を語る

 アメリカのメディアVentureBeatは1月19日(日本時間)、Activision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)のCEOであるBobby Kotick氏へのインタビュー記事を公開した。記事内では、件の買収に関してActivision Blizzardがマイクロソフトと合意に至った理由が語られている。

 本記事では初めに、おさらいとしてXbox公式ニュースサイト「Xbox Wire」やニュースリリースで発表された内容から、今回の買収によりマイクロソフト側が期待感を露わにしたことについて振り返っておきたい。

 

マイクロソフト側の狙い

 マイクロソフトが受けるであろう恩恵としてはまずひとつに、同社のクラウドゲーミング計画が加速することが挙げられる。

 マイクロソフトは世界中のより多くの場所で、PC、タブレット、スマートフォンなどのあらゆるデバイスから、Xboxコミュニティに参加できるようになるクラウドゲーミング計画を推進。

 中でもモバイル領域に注目し、『キャンディークラッシュ』で知られるKingなどを擁するActivision Blizzardの知見を活かして、「Halo」を始めとしたフランチャイズを“事実上どこでも楽しめるようにすることを目指す”という。

 これまでモバイルゲーム市場と接点が希薄だったマイクロソフトにとって、大きな前進になることは間違いない。

 また、Game Passのポートフォリオ強化に関してはゲームユーザーとしても注目度が大きいだろう。

 Xboxの責任者であるPhil Spencer氏曰く、今後Activision Blizzardが擁する「コール オブ デューティー」シリーズのInfinity Ward、Treyarchを始めとした30のゲーム開発スタジオの過去作も加え、新作に関してもできる限り多く、Xbox Game PassとPC Game Passで提供する予定とのこと。同時に、Game Passの加入者が2,500万人を超えたことも明らかになっている。

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 190カ国で約4億人の月間アクティブプレイヤーを抱えており、10億ドル規模のフランチャイズを複数保有しているActivision Blizzardのタイトルを加えることで、ゲーム業界のサブスクリプションサービスの中でも最も多様なラインアップを構築し、更なる利用者拡大に繋げていくというわけだ。

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 なお、Activision Blizzardがすでにマルチプラットフォームで展開しているゲームに関しては、今後もサポートしていく方針が示されている。

 また、eスポーツ部門の存在も忘れてはならない。Activision Blizzardはメジャーリーグ・ゲーミングなどeスポーツ事業者を取り込みながら、「コール オブ デューティー」シリーズや『オーバーウォッチ』といったタイトルのeスポーツリーグを開催するなど、自社でeスポーツへの取り組みを強化してきた。

 今回の買収によって今後、リーグが開催されるタイトルの増加など、eスポーツ事業にも広がりがみられるかもしれない。

 

Activision Blizzard側の狙い

 以上が、マイクロソフトの側から読み取れる内容となる。一方のActivision Blizzardが、マイクロソフトを“ベストパートナー”(インタビュー内の表現を引用)と考える理由は何だろうか。

 VentureBeatの記事におけるBobby Kotick氏の言によると、“より多くのリソースを持つ大企業との競争が激しくなっている”ことに対して、“社内の計画を実行するためのリソースがなかった”ことが大きな理由に挙げられている。

 テンセントやソニーのみならず、Google、Amazon、Apple、Facebook、Netflixといった大企業がゲーム事業に参入している昨今では、世界最大規模のゲームメーカーであるActivision Blizzardですら競争力の劣る小さな企業になってしまうというのだ。

 リソースについては、AIや機械学習、データ分析など専門的な分野で人材確保のためのパイプラインがないことに加え、供給連鎖に関しても(深刻な半導体チップ不足が続く中)、社内で賄うことができなかったという。

 Bobby Kotick氏はかつてパブリッシャーとして世に送り出した『ギターヒーロー』や『スカイランダーズ』など過去のIPを例に挙げ“とてもクールなビジョンを持っていたのですが、それを実現するためのリソースがなかった”とし、そのためにマイクロソフトという大きなパートナーが必要だったのだと語った。

 改めておさらいしておくと、Activision Blizzardは母体であるActivisionとBlizzard Entertainmentが2008年に合併して設立されたゲーム会社。これまでに「クラッシュ・バンディクー」シリーズや「コール オブ デューティー」シリーズ(Activision)、「ディアブロ」シリーズや『ワールド オブ ウォークラフト』、『オーバーウォッチ』(Blizzard)などの人気作を手掛けてきた。

 そうした背景を鑑みると、上記の声明は、Activision Blizzardに対する強いリスペクトを感じさせながらも、インクルージョン(包括・一体性)を全面的に打ち出した非常にメッセージ性の高い内容となっている。

 買収後、Activision BlizzardはPhil Spencer氏による直接の指揮下に置かれるという。そこではチームの体質改善が強く求められ、いかなる理由でも差別されることのない平等な環境を目指して新たな一歩を踏み出すのだろう。

 いちゲームファンとしては、日々素晴らしいコンテンツを提供すべく携わっているすべてのスタッフが、正当で平等な環境で活躍することを強く願いたい。そして、傘下入りでリソースを得た同社によって、『オーバーウォッチ2』など遅延している新作タイトルが無事に開発されることを祈りたい。今後、買収完了は2023年を予定しており、両社の動向から目を離せない。

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森口 拓海(Takumi Moriguchi)
森口 拓海(Takumi Moriguchi)
雑誌やWEBメディアを中心に記事を執筆。ゲームは雑食で多様なジャンルを好み、業務の延長でアプリ分析も得意。恩のあるゲーム業界に貢献すべく日々情報を発信。

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