
バーチャルライバー/VTuberグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLORは6月8日、同日付で東京証券取引所グロース市場に上場したことを発表した。2017年の創業以来、5年での上場となった。あわせて、「事業計画及び成長可能性に関する事項」を開示。
2021年に旧社名「いちから」から「ANYCOLOR」に改名した同社は2022年1月31日時点で206人の従業員、107人のVTuber(2D/3Dで表現されたアニメ調のキャラクターをアバターとして活動を行うタレント)を抱える。同社はこれまで、VTuberを通じたライブストリーミングを起点とし、企業案件・PR、ライブイベント、グッズ・デジタルコンテンツ販売など複数の事業を展開。




2021年度4月期における「にじさんじ」コンテンツの総再生時間(Youtube上)は4.96億時間に上り、「にじさんじオフィシャルストア」や「にじさんじFAN CLUB」の利用に必要な「ANYCOLOR ID」のアカウント数は43万を突破。うち、29歳以下のユーザーが84%を占め、男女比は44% : 56%であることが明かされており、男女問わず若年層のファン創出に成功しているがうかがえる。


現在、2022年4月期における第3四半期までの累計で売上高101億5,900万円、営業利益31億3,600億円、純利益20億6,000万円を記録。売上高成長率は2020年4月期~2021年4月期に119.5%増で推移している。さらに、YoutubeにおけるVTuberあたりの再生時間成長率も75.3%増と急成長を遂げていることがわかった。
直近でも、デビューからわずか2週間でYoutubeチャンネル登録者数100万人を突破する人気VTuberが同グループから誕生するなど、その好調ぶりが見れとれる状況。
【にじさんじについて詳しく紹介した記事はこちら】
■「いちから」から「ANYCOLOR」へ。企画やイベントで振り返る2021年のにじさんじ
■類まれな実況センスと、全国トップクラスのゲームスキルでファンを魅了。信頼できるオタクの星「社築(やしろきずく)」解説
■物腰柔らかい落ち着いたムードと、激しい歌声、無邪気にはしゃぐギャップが魅力。大人であることを全力で楽しむ社長「加賀美ハヤト」解説
■リスナーに愛されるフリーダムなエルフ「花畑チャイカ」解説 狂人と呼ばれるほどのインパクトに、垣間見えるカワイらしさとカッコよさ
「にじさんじ」の5つの強み
同社が掲げる強みとして下記の5つがある。
・VTuber業界におけるパイオニア
・バーチャル世界における競争優位性の構築
・にじさんじブランドの魅力
・持続的可能な成長モデル(質・コンテンツ・地域)
・高い成長性と収益性の実現
まず、VTuber市場の黎明期よりいち早く事業を拡大させることでパイオニアとしての地位を確立したことだ。現在のVTuberチャンネル数及びYouTube総再生回数は業界一、同じく著名事務所の「ホロライブ」を大きく引き離している(下記画像のBにあたる)。

また、「にじさんじ」を語るうえでVTuber同士のコミュニティも欠かせない。
同じ事務所内で積極的にコラボやゲーム大会(イベント)を展開し、それらの交友関係(及びコミュニティ)がユーザーの二次創作やブランド拡大にも寄与している。たとえば、異なるファン同士の相互相客をはじめ、ライバーのまだ見ぬ魅力を引き出すきっかけにもつながるなど。こうした拡大したにじさんじコミュニティは、同社の事業において重要なファクターとなっている。

事業ごとの売上高も公開された。2022年4月期第3四半期までの各事業の累計売上高は下記の通り。
・Live Streaming:22億2,700万円(売上比率23%)
・コンテンツ売上高(グッズ等):47億9,000万円(売上比率50%)
・イベント売上高:7億3,300万円(売上比率8%)
・プロモーション売上高:18億3,500万円(売上比率19%)
注目なのは、多様な事業ポートフォリオを実現できていること。上記の売上比率を見て分かる通り、ひとつの事業に依存せず、さまざまな事業で売上を形成し企業としても健全だ。なかでも案件などのプロモーション事業の売上高が急成長。新型コロナウイルスも収束に向かえば、イベント売上高の復調も期待できる。

そして現在、ANYCOLORは日本での活動をする「にじさんじ」のほか、海外を活動拠点とする「VirtuaReal Project」、「NIJISANJI ID」、「NIJISANJI EN」など、さまざまなグループを運営。英語圏(北米)における新たな成長可能性も示している。

一方、事業における主要なリスクとして「他社が運営している動画配信プラットフォームへの依存」「人気VTuberへの依存」「動画内容に不適切な内容が入ることによる評判の低下」などを挙げている。これに対して、「動画配信ビジネス以外の収益源確保」「VTuberの活動を幅広くサポートする体制の構築」「所属VTuberに対するコンプライアンス研修やコンテンツ管理への注力」などの対応策を掲げる。

ANYCOLORは2022年4月期 通期の業績予想として、売上高132億5,900万円(前期比73.6%増)、営業利益37億8,500万円(同160.7%増)、経常利益37億5,300万円(同158.6%増)、純利益24億9,700万円(同166.5%増)を見込む。

主軸となるライブストリーミング事業では、活動するVTuber数の増加、グループ力を活かした配信コンテンツの拡充等により、前期比で23%程度の成長が見込まれる。また、好調な領域としてはコマース事業の内グッズ・デジタルコンテンツなどの販売を含むコンテンツ関連が前期比88%増、大型の企業案件獲得が実現したプロモーション事業が前期比134%増となる見込み。